久保山 圓覚寺 天池庵

明治17年、鎌倉・円覚寺の今北洪川管長は、横浜の地が開港以来、人口増大・都市化の発展がめざましいにもかかわらず、円覚寺の末寺がなく、布教伝道における支障があるとして、円覚寺塔頭の天池庵の名を以って一寺を建立するよう木村潤石(塔頭済蔭庵)らに要請しました。翌18年、本山の開山600年遠忌の記念として、久保山の地に出張所を設けました。これが久保山円覚寺のはじまりとされています。
創建当初の経営は困難を極め、成果を上げるに至りませんでした。そこで管長洪川は、金井村玉泉寺(現在の横浜市栄区)の天敬省玄に命じ、寺務を執らせることにしました。省玄は明治20年、円覚寺別院を称する許可を得、また金井玉泉寺の祠堂金の一部や、同寺所有の不動産を逐次売却して、久保山円覚寺別院の経営にあたりました。本尊は本山秘蔵舎利の分粒です。
明治25年、浄智寺の客殿萱葺九間半に六間半、庫裡は師弟祥山和尚の実家である西邑家から茶室の瓦葺六間半に五間半の寄付を受けて移築し、布教の道場と庶民の葬祭回向を主とする別院が完備されました。
明治39年11月、省玄は死去しましたが、本山は葬送にあたって別院中興の称号を贈り、その勲労を表彰しました。
明治43年11月20日、院代石井雪岑が本山の許可を得て独立の一力寺とし大本山直末と改め、堂宇の本堂、庫裡、小書院、表門を完備しましたが、大正12年9月1日の関東大震災に遭い、建造物は倒壊してしまいました。その後、昭和6年1月、住職大玄武渓によって本堂、玄関、庫裡と書院が再築されましたが、昭和20年5月29日の横浜大空襲によって堂宇の全ては烏有に帰してしまいました。昭和39年4月、木造瓦葺間口一〇間半、奥行一〇間。向拝間口五間に奥行二間。玄関三〇坪。昭和45年5月庫裡間口二間半に奥行七間、二階客殿、書院九間に六間が完成して現在に至ります。