船越八幡神社 (舩越八幡神社)

　当社は、第四十五代聖武天皇の神亀元年（七二四）に鎮座したと伝えられています。宝暦十三年（一七六三）の百々手記録によると、神亀元年は、天下が乱れ奇異なことや、怪しいことが多く起こっていたので、天皇は群臣を集めて、どうすればよいかを相談させ、ト家（占い師）に命じて占わせました。ト家は、「これは国家不安の兆しである。そもそも我が国は神国であります。海南に八幡大菩薩の大社を建てて至誠を尽くしてお祈りすれば、乱れは自然となくなります」と申し上げました。
　そこで天皇は、四国の官僚地頭に命じて、八幡大菩薩の宮社を造営するようにさせました。造営が完了したころ、神客十体楼船に乗り家之浦の磯辺に着いたので、浦人がこれを朝廷に奉上したところ、宇佐八幡の尊体であるから造営した社殿に祀れ、と命があったのでここにお祀りしたところ、天下たちまち静
かとなり、村民は平和に幸せに暮らせたといわれています。また神楼船に乗っておこしになったので船越八幡と称し、この地を船越と呼ぶようになりました。
　明応七年（一四九八）火災にかかり、本殿、拝殿等が全焼しました。その後西讃三郡（多度、三野、豊田）を領していた雨霧城主香川頼信父子が氏神として社殿を造営したうえ、社領（香田二反）を寄進しました。
　天正六年（一五七八）に長宗我部元親が讃岐に侵攻した際、兵火にかかり社殿、古記等多くを消失しました。その後再興しましたが、旧時の盛大さには及びませんでした。
　元禄六年（一六九三）京極高通が、拝殿を再築しました。また藩主京極氏は、尊敬の心厚く、寛保三年（一七四三）に絵馬を奉納されました。この絵馬は、県内最古の絵馬として、町の文化財に指定されています。
　その後安永五年（一七七六）に釣殿、拝殿を改築、天明六年（一七八六）に本殿屋根葺替え、明治
三十八年（一九〇五）昭和九年（一九三四）に本殿、拝殿屋根葺替え、大正四年、昭和四十一年社務所改築、昭和四十八年本殿屋根銅板に葺替え、平成六年拝殿屋根葺替え等幾多の遍歴を得て今日に至っております。
このように当社は、古来より荘内八浦の産土神として尊崇され、特殊神事である「百々手祭」は、約一千年連綿として古式をつたえ、例年古儀により祭儀を行っております。また「おとぐい神事」も今もって斎行されています。