佐比内熊野神社

延暦２０年(８０１)、坂上田村麻呂が征夷大将軍として東下し深く奥地に入り、佐比内の萩之森ともいう神田山の丘に陣営する当時、同郷松田山大峰の小丘に土民を祭る所の小祠御熊様と名乗っていました。将軍ここに一宇の社殿を造営して伊弉那諾命、伊弉冉命二柱の神を勧請し鎮撫を祈り、酋長大毛人に祭事を掌らしめたところ、近郷の民衆参加、期せずして大いに帰伏順和しました。たまたまその秋季に悪疫が流行し、土民はなはだ苦しみました。将軍又一宇を建て、疫病退治に素戔嗚尊を勧請祈願したところ効果がありました。後年疱瘡神堂といわれ、さらに八坂神社と改称した摂社となります。嘉保２年(１０８８)、目代藤原清衡堂宇を修理し、祀田三町を寄進しました。嘉応２年(１１７０)、鎮守府将軍藤原秀衡の使節例祭に参向され、文治５年(１１８９)９月、源頼朝陣ヶ岡の軍地より使節を遣わして神饌供進されました。元中５年(１３８８)、神田館主川村喜貞厚く本神社に帰依し、熊野大権現と崇めて社殿を改築し、一族松田式部に禰宜のことを奉仕させました。慶長１０年(１６０５)、氏子崇敬者相謀り大峰より神田館跡に遷座を行いました。寛永４年(１６２７)、南部直栄が八戸より遠野に転封せられ領土となった当時、通過途次本神社に参詣社領三石を寄進し、爾後代々の祈願所たり。明和３年(１７６６)、南部弥六郎義顔檀主として社殿改装されました。明治維新(１８６８)に際し、社領が無くなり、維持費は氏子一般の負担となります。同２年(１８６９)、熊野大神と改め、八柱の神々を合祀し、同４年(１８７１)、村社熊野神社と改称しました。同２８年(１８９５)、社殿を改装し、同４２年(１９０９)、神輿を新調しました。昭和２６年(１９５１)１０月、佐比内出身戦没９２柱の御魂を慰霊塔に奉祀しました。同２７年(１９５２)３月、国有境内地６３５坪２４勺を無償で神社有に譲与されました。同５１年(１９７６)１月、民有山林も譲られ、全部合筆４，８７２平方メートルを神社境内として登記しました。同５３年(１９７８)、社殿の改築整備と境内地模様替えを竣功しました。