萬年山長泉寺は曹洞宗の寺院で、本尊は大日如来坐像です。開山は和泉村(現狛江市)の泉龍寺二世欄室関牛といわれます。
当寺は慶安元年(一六四八)、世田谷の烏山にあった通称「お伊勢の森」に開創しましたが、二年後火災に遭い、明暦元年(一六五五)にこの地に移ったと伝えられ、現在の本堂、客殿、庫裏は、平成二十三年十月に整備されたものです。
本堂前の観音堂は「円通閣」といい、享保十三年(一七二八)に建立されたもので、西国三十三ヵ所の観音像を安置しています。また、堂内に納められている板絵着色西国巡礼図(区指定文化財)は、狩野派の絵師中田小左衛門が描いたもので、近世の風俗を知る上で貴重な資料です。
このほか、文化財としては承応三年(一六五四)、貞享元年(一六八四)銘の地蔵をはじめ石像や庚申塔も多く、本堂の前には区内でもめずらしい十六羅漢の石仏も保存されています。
また、境内の老松の下には徳本行者真筆による石塔(文化十四年一八一七)や天保十一年(一八四〇)に造られた釈迦如来・文殊菩薩・普賢菩薩の三尊仏があり、墓地にはかつて上高井戸宿の本陣であったといわれる「武蔵屋(並木氏)」の墓(区登録文化財)があります。
なお、かつて当寺の境内では四月に「長泉寺の馬駆」、八月に「長泉寺の相撲」が行われ、近村にも有名でありましたが、明治末から大正の初め頃いずれも廃絶してしまいました。(杉並区教育委員会掲示より)